機械学習やシミュレーションなどGPUを用いたプログラミングに適したノートパソコンの選び方
更新日:2024年3月3日
ノートパソコンに画像などのグラフィックス処理を行う専用のGPUを搭載すると、高速に計算を実行することができます。
ゲーミングノートPCなどのハイスペックなノートパソコンには、このようなGPUを搭載した製品が多く、AIなどの機械学習やディープラーニング、シミュレーションなど、高度な科学計算を高速に実行することができるようになります。
このページでは、実際にGPUを使って計算を行うとどれくらい高速になるのかといったことや、GPUを使った計算を行うためのGPUの選び方、必要なノートパソコンのスペック、そしておすすめのノートパソコンをご紹介しています。
このページで紹介している内容
GPUを使うと計算処理が高速にできる
パソコンではCPUで処理を行っていますが、それとは別に、画像などのグラフィックス処理を行うのに適したGPUというものが搭載されています。
一般的なノートパソコンではCPUにGPUが内蔵されているので特に意識することはないのですが、ゲーミングノートパソコンなどのハイスペックなPCでは、より高度な専用のGPUを搭載していることが多いです。
通常、計算を行う場合はCPUを使うイメージがあると思いますが、実はこのような専用のGPUを利用すると、CPUよりも圧倒的に高速に実行することが可能になります。
特に、最近よく耳にすることが増えたAIや機械学習、ディープラーニングといった分野では、GPUを使った計算処理を行います。また、理系の研究などでも、シミュレーションを実行したり、複雑な数式の演算処理を実行することも多いです。
では、実際に一般ユーザーが購入できるノートパソコンにおいて、GPUを使った計算処理がCPUで行った時と比べてどれくらい違うのかをご紹介したいと思います。
CPUとGPUで実際に計算を行った時の処理時間の違い
まず、下のグラフは、簡単な行列の演算をCPUとGPUそれぞれで行い、処理時間の違いをグラフに表したものです。行列は10行×10列というように、縦と横に数値が並んだもので、物理や工学系、情報分野など、様々な科学的な領域で非常によく使われます。
行列の積をCPUとGPUを用いて計算を行った結果を示すグラフ。行列のサイズが大きくなるほど、CPUとGPUで計算時間の差が大きく開いた。
2,000×2,000の行列のように、行数(列数)が小さいと処理時間が1秒以内と短くて、問題になることはありません。しかし、行列サイズが大きくなるにつれて、CPUでの計算時間は長くなっていきます。特に10,000×10,000の行列演算では、CPUが12.6秒に対して、GPUではわずか0.90秒と圧倒的な差が出ました。GPUでの処理がとても高速なのがわかります。
次の例は、ニューラルネットワークと呼ばれるもので、AI(機械学習)の分野でよく使われる手法を使って計算を行ったものです。
こちらのグラフを見るとわかるように、CPUでの処理時間は928.34秒だったのに対し、GPUでの計算はたったの36.30秒と、大きな違いが出ました。その差は約30倍です。GPUでの計算が非常に高速なのがわかります。
これらの例を見てわかるように、GPUでの計算はCPUでの計算と比べて非常に高速です。プログラムを書いてボタンを押せば、GPUの場合は迅速に答えが出るのですが、CPUでは長時間待たなければなりません。
今回の例では比較的簡単な処理を実行しているのですが、実際にプログラムを自分で組んでいく場合には、より複雑になって行くことが多いです。その場合、処理時間がもっと長くなる場合もあり、少しでも早く処理を終わらせるためには、GPUを利用するのが効率的です。
ちなみに、今回の計算で使用したノートパソコンのスペックは以下のようになります。
OS:Windows 10 Home
CPU:Intel Core i7-9750H
GPU: NVIDIA GeForce RTX 2060
メモリ:16GB
ストレージ:SSD: 256GB + ハードディスク: 1TB
CPU:Intel Core i7-9750H
GPU: NVIDIA GeForce RTX 2060
メモリ:16GB
ストレージ:SSD: 256GB + ハードディスク: 1TB
NVIDIA GeForceシリーズが使いやすい
GPUを使うと、計算時間が大幅に高速化されることがわかりました。では、具体的にはどんなGPUを選べば良いのでしょうか?
現在、ノートパソコンに搭載されるGPUにはNVIDIA製とAMD製の2種類のものがあります。具体的には以下の表のようになります。
メーカー | 製品名 |
---|---|
NVIDIA | GeForce RTX 4050 / 4060 / 4070 / 4080 GeForce RTX 3050 / 3060 / 3070 / 3080 GeForce GTX 1650 / 1660Ti など |
AMD | Radeon Pro 5300M / 5500M Radeon RX5500M / RX5600Mなど |
GPUでの計算処理に利用する場合には、NVIDIAの製品を利用するのがおすすめです。その理由は以下の通りです。
・ツールが揃っている
・情報量が多い
・選べるパソコンの数が多い
・AMD製のGPUでは少し難しい
・情報量が多い
・選べるパソコンの数が多い
・AMD製のGPUでは少し難しい
まず、GPUでの計算処理を行う場合、圧倒的にNVIDIAの製品を用いている例が多いです。NVIDIA製のものは計算を行うために必要なツールが揃っていますし、書籍にしてもネットにしても情報が多く、とても充実しています。
もしわからないことが出てきた時でもすぐに調べられますので解決しやすい、というのも大きなメリットです。
また、専用のGPUを搭載したノートパソコンは圧倒的にNVIDIA製のものが多く、選択肢が広いです。気に入ったパソコンがお手頃な価格で手に入りやすいという面でも、NVIDIA製のGPUがおすすめです。
一方で、AMD製のGPUで計算処理を行うためには、NVIDIAほどツールが充実していないという点が挙げられます。やろうと思えばできなくもないのですが、最初の設定が難しいです。参考になる情報が少ないということもありますし、Windowsでは対応できないものもあったりするなど、少々敷居が高いです。
NVIDIAの製品を使う場合は、上の表に書いてあるようなGeForce RTX 4060やRTX 3060などの製品がおすすめです。
GeForceシリーズには、GeForce MX550などのMXシリーズもありますが、このシリーズではGPUを使った計算はできませんのでご注意ください。GeForceシリーズはGTXまたはRTXシリーズから選ぶようにしましょう。
性能の見方
NVIDIA GeForceシリーズには、複数の製品がラインナップされています。現在利用できる主な製品には、以下の表のようなものがあります。黄色で示されたものがGPUのプログラミングに対応できる製品になります。
GeForce RTX 4090 | |
GeForce RTX 4080 | |
GeForce RTX 4070 | |
GeForce RTX 3080 | |
GeForce RTX 4060 | |
GeForce RTX 3070 | |
GeForce RTX 3060 | |
GeForce RTX 2080 MaxQ |
|
GeForce RTX 4050 | |
GeForce RTX 2070 MaxQ |
|
GeForce RTX 2060 MaxQ |
|
GeForce RTX 3050Ti | |
GeForce GTX 1660Ti | |
GeForce RTX 3050 | |
GeForce GTX 1650 | |
GeForce MX350 | |
Intel Iris Xe | |
GeForce MX250 | |
Intel UHD | |
スコア(3DMark FireStrike) 黄色:GPU計算に対応できるNVIDIA GeForceシリーズ |
GeForceシリーズの性能はこの表で言うと、上の方にある製品ほど性能が高くなります。一般的な傾向として、RTXやGTXの後ろの数字が大きくなるほど性能が良い、と覚えておくとわかりやすいでしょう。GPUで計算を行う場合も、より高速に実行することができます。ただし、その分価格も高くなります。
GeForce搭載のノートパソコンを購入する際、このグラフを参考にしていただければと思います。
GPUのメモリ容量にも気をつける
ノートパソコンに搭載されているメモリとは別に、GPUにもメモリが搭載されています。
GPUを使って計算を行う場合は、このGPUのメモリ容量も重要になってきます。メモリ容量が少ないとエラーとなってしまい、計算が中断してしまいます。
もし、どれくらいのメモリ容量が必要かが事前にわかる場合は、下の表を見て適切なGPUを選択すると良いです。
GPU | メモリ |
---|---|
GeForce RTX 4080 | 12GB GDDR6 |
GeForce RTX 4070 | 8GB GDDR6 |
GeForce RTX 4060 | 8GB GDDR6 |
GeForce RTX 4050 | 6GB GDDR6 |
GeForce RTX 3080 | 16GB GDDR6 |
GeForce RTX 3070 | 8GB GDDR6 |
GeForce RTX 3060 |
6GB GDDR6 |
GeForce RTX 3050 |
4GB GDDR6 |
GeForce RTX 2080 | 8GB GDDR6 |
GeForce RTX 2070 | 8GB GDDR6 |
GeForce RTX 2060 | 6GB GDDR6 |
GeForce GTX 1660Ti | 6GB GDDR6 |
GeForce GTX 1650Ti | 4GB GDDR5/6 |
GeForce GTX 1650 | 4GB GDDR5/6 |
ただ、実際はどれくらいの容量が必要かはわからないことも多いと思います。規模の大きなシミュレーションやデータ量が多い計算などを実行する場合は多いほうが良いです。また、趣味用途や学習などで使う場合には、そこまで必要としない場合もよくあります。
メモリ容量はなるべく多いほうが安心なのは言うまでもありません。最初はそれほどメモリを使う計算をしなくても、だんだん理解が進むにつれてメモリ容量を必要とする計算をするようになることも多いでしょう。ただ、メモリが多いGPUはその分価格も高くなりますので、うまくバランスをとる必要があります。
性能とメモリ容量、そして価格のバランスを考えると、6GB以上のメモリを搭載したGeForce RTX 4050や4060、GeForce RTX 3060などが良い選択肢になってきます。
GPUでの計算に必要なノートパソコンのスペック
ノートパソコンで機械学習やディープラーニング、シミュレーションなどのGPUを用いたプログラミングを行う場合のスペックを簡単に確認しましょう。
OS
Windowsが良いです。現在のMacはAMD製のGPUが搭載されているので、GPUの計算を行うには少々扱いにくいです。
LinuxというOSを使うことも多いのですが、パソコンに詳しくないと難しいです。最初はWindowsではじめて、慣れてきたらLinuxに進むという順番が良いでしょう。
GPU
NVIDIA GeForce製品が良いです。ノートパソコンで使用できるGeForceには、GTXシリーズ、RTXシリーズ、MXシリーズがありますが、GPUでの計算に使えるのはGTXシリーズとRTXシリーズになります。MXシリーズは使えませんのでご注意ください。
これからGPUでのプログラミングを勉強しようとする場合や、価格重視、趣味用などであれば、GeForce RTX 4050やGeForce RTX 4060、GeForce RTX 3050などが良いでしょう。
GeForce RTX 3050のメモリは4GBとなっていて少し少ないかもしれませんが、学習を進めたり趣味で動作させるのに使うことができます。GeForce RTX 4050はメモリが6GBあり、より幅広く使えます。性能も良くて手に届く価格帯のものが多く、コスパがとても良いです。
しっかり使いたいということであれば、GeForce RTX 4060 / 4070はメモリが8GBありますのでおすすめです。
GeForce RTXシリーズは深層学習用のテンソルコア(Tensor Core)というものを搭載していて、より高速に計算を実行できるようになっています。
CPU
GPUにGeForceを搭載したノートパソコンは、Core i7-13700Hなどの高性能なCPUを搭載していることがほとんどです。一般的なノートパソコンと比べてパフォーマンスが高いです。
Core i5とCore i7から選べることが多いですが、価格を抑えたいならCore i5、性能を十分に保ちたいならCore i7が良いです。
メモリ
8GBでも大丈夫なことが多いですが、処理によっては16GB必要になることもあります。
ストレージ
SSD、もしくはSSD + ハードディスクという構成が良いです。ハードディスクだけだと処理速度が落ちます。
GPUでの計算におすすめのノートパソコン
以上のスペックを満たしたノートパソコンは、ほとんどがゲーミングノートPCになります。また、ゲーミングPCではないものの、GeForce GTX製品を搭載したノートパソコンもあります。
詳しくは以下の記事で紹介しておりますので、是非ご覧ください。
詳細はこちら → おすすめのゲーミングノートPC
詳細はこちら → 高性能CPU・大容量メモリ、高いグラフィックス性能を搭載したハイスペック・ノートパソコン
この記事を書いた人
石川 |
著者の詳細はこちら
1.動画編集や理系の研究用途などの高負荷な処理にも使えるハイスペック・ノートPC
2.プログラミングに最適なノートパソコンの選び方
3.大学生が楽しめるゲーミングノートPCの選び方
4.大学生のノートパソコンに最適なCPUは何?
▲ このページの上部へ戻る